日 時:2015年11月14日(土)13:30~16:30
場 所:立教大学池袋キャンパス 7号館3階 7301教室
問題提起者:濱谷 正晴氏(一橋大学名誉教授・社会調査論)
参加者:17人(うち被爆者7人)
【概 要】
被爆者たちが自ら立ち上がり60年の長きにわたって続けてきた運動、中でも自分たちの苦しみの根源である原爆被害とはいったい何なのか、未曾有の体験の実相を追究する調査活動は、要求や運動を築き上げる土台ともなったもの。
問題提起者の濱谷さん(一橋大学名誉教授・社会調査論、日本被団協「原爆被害者調査」の設計・分析に専門家として関わる)は、これまでに行われてきた被爆者調査のうち、研究者が手掛けたものはほんの一部に過ぎず、その多くが被爆者運動のなかで行われてきたと指摘。「原爆被害者の会」(1952結成)にはじまり原水爆禁止運動から日本被団協結成にいたる救援運動による調査と、地域の被爆者の会による調査活動(数次にわたる調査を重ねてきた岩手と静岡を中心に)について、綿密な資料にもとづき紹介されました。規模も目的も様々な調査が全国各地でくり返し行われ、しかも初期のころから健康状態(放射線量調査や自覚症状への着目も)、生活状態(被爆前後の比較、家族破壊、病気と貧困の悪循環)にとどまらず、精神的な苦しみや被害者としての意見・訴えも把握するなど、国の原爆被害認識や政策と切り結ぶ調査が行われてきたことに驚かされます。
質疑討論では、「専門家や多くの人々の協力でこのような調査ができたのはなぜなのか」、「何もしてくれない国に対する怒りに燃えていた被爆者の強い思いに周りが動かされたのではないか」、「被爆から70年経ってもまだ被害は続いている、いま解明すべき被害の実相は何なのか」など多様な意見が出され、被爆者の運動は実に豊かな営みであり、その経験を伝え、知り、学べる場を工夫して創り出していく必要があることが話し合われました。